今回はSF愛好家が抱えるジレンマについてです。

SFとういう文学を愛している、SFは人生の基盤だ、という人もそこそこいるとは思うのですが、さてこの愛を誰かに伝えられた事はあるでしょうか?

この寡占で意義深い文学を愛する人間にはこの文学を布教する義務があります(SF信者)。だが、如何せんこの文学は入り口が難しい。

SF愛好家は偶発的に世界各地に生まれその孤独性ゆえに仲間を探す旅に出ます。世界各地で愛好家の大会が暗黒武闘会のように陽の当たらぬ荒野で盛大に晴れやかに行われております。愛好家同志が出会う事はありますが愛好家が自然発生する確率はどうやらこの文学が生まれて以来変わらないようでどうもファンの数は増えも減りもしていない、どちらかと言うと少子化の比率と相まって減ってきているように思います。

今こそSFの時代だと思うのです。イーロン・マスクもピーター・ティールも世界に偉大な影響を与えている人間は大体SFの洗礼を受けています。彼らのビジネスはSFの文脈に沿っているので彼らのビジネスを理解するにはSF文学を理解する事が必須です。Twitter買収も社会科学的なSFのジャンルの一つと言えますのでそんな突飛な事というわけではありません。日本のクリエイティブな現場においてもSFは欠かす事の出来ない文学です。ガンダムの富野由悠季、ドラえもんはじめ言わずとしれた藤子不二雄、エヴェンゲリオンの庵野秀明始めとするトップクリエイターの根底には深いSF的理解があります。しかし現状世間のSFに対する認識はいかがなものでしょうか?

オタク、難しい機械、マシーン、スターウォーズ、ガンダム、エヴァンゲリオン、宇宙でどんぱちするやつetc..

間違いではないけれど、侍をちょんまげだけで語るくらいピンポイントな印象です。

だから我々には布教する必要がある、と思います。各々好きな作家や作品があるでしょう。アーサー・C・クラーク、ハインライン、アシモフ等。この文学会には素晴らしい作家に枚挙にいとまがありません。

さてここで話を戻します。

その愛を誰かに伝えられた事があるでしょうか?

あなたが有名大学の理工系の学生かかなり運が良くない限り、『2001年宇宙の旅』、『月は無慈悲な夜の女王』、『ファウンデーション』を勧めてSFの良さをわかってもらえる事はないでしょう。まして小学生や中学生に進めても逆効果というものです。

まず自分の趣味が高尚で伝わりにくいものだと認識する必要があります。あなたがどんなに愛していても絶対にグレッグ・イーガンの『ディアスポラ』のようなバキバキのハードSFや、聖書のように分厚いハインラインの『異星の客』を渡してはいけません。ディアスポラに至っては未だに何を読んだのかわかってませんw

前置きが長くなりましたが一般人にSFを布教する際にこれくらいから始めたらいいのではないか? という本、作家をチョイスしてみました。あなたが布教する際の一助になればと思います。

『銀河のヒッチハイク・ガイド』 by ダグラス・アダムス

これはイギリスの脚本家でもあるダグラス・アダムスが書いたSFコメディーです。詳しい内容や書評はここでは省きますが、設定や筆致がポップでありブリティッシュっぽいブラックユーモアが溢れていて初心者にも読みやすい一冊です。読みやすさの中にもSF独特の世界観や表現、含蓄が含まれていてGatewayにはもってこいです。特に小学生にもおすすめ。シリーズ化されているので興味を深めていく事もでき、大人も十分に楽しめる内容です。

ジュール・ヴェルヌ作品

続いてはSFの父と言われるジュール・ヴェルヌの作品群です。思えば僕も小学校3年生の時に読んだ『海底二万里』が初めてのSFでした。低学年向けの簡単に要約された文庫だけでなく、分厚い完全版がある事を学校の図書館で見つけ連続で2度読みました。ちょうど大好きだった庵野秀明の「ふしぎの海のナディア」の原作としてクレジットされていて二度、三度楽しんだ思い出があります。それ以外にも『月世界に行く』『十五少年漂流記』『気球に乗って5週間』など名作、良作が多くどれでもいいからオススメできます。すべての少年少女、夢を忘れた大人たちに是非ともオススメしたい作家です。SFというジャンルを越えた名作です。

『タイムマシーン』 by H・G・ウェルズ

SFの代名詞、タイムマシーンを人類史上初めて描いた作品です。H・G・ウェルズは先のジュール・ヴェルヌと並んでSF の父と言われます。ただヴェルヌの作品に比べ内容が過激(現代的にはそう感じないが、エッジが効いてるくらいの解釈が正しいと思う)な為全ての作品がオススメできるとは言えません。ヴェルヌが宮崎駿ならウェルズが富野由悠季という感じでしょうか。

このタイムマシーンは若干ダークな世界観がありますが、それ以上にスリリングで未来に対して哲学的な視点を養ってくれます。形容されているタイムマシーンの風体がドラえもんや不二子作品に出てきそうなゴツゴツした感じが面白いです。映画も製作されていますので合わせて見てみても面白いかもしれません。内容はともかくタイムマシーンのセットがうまく出来てます。

もしかすると『タイムシップ』というスティーブン・バクスターが書いたこの小説の続編にも興味が湧けば儲けもんです。こちらはガチガチのハードSFです。

『すばらしい新世界』 by オルダス・ハクスリー

こちらは以前このブログでも紹介した事のある作品です。詳しくはこちら

現代の社会主義的な思想、世相の深層心理は同じディストピア小説の『1984』byジョージ・オーウェルのビッグブラザーより、ハクスリーの統制官に近いと思いますから是非一読してもらいたい一冊です。光文社版の翻訳が非常に読みやすくなっていますので是非手にとって読んでもらいたいです。頭が良さそうな小学生などがいたら是非勧めたい一冊です。中学生くらいになったら推薦図書に入れたい一冊。

『幼年期の終わり』 by アーサー・C・クラーク

言わずと知れた巨匠アーサー・C・クラークの名著です。この本がなければスピッルバーグの『未知との遭遇』『E.T』、そして『インディペンデンスデイ』、ジェームスキャメロンの『アビス』も生まれなかったでしょう。

内容の説明は至るところにあるので詳細は省きます。人類と未知の生命との出会い、神との遭遇を予言的、神話的と言ってもいい内容を不気味にリアルに人類共通ビジョンをその巧みな筆致の中に見せてくれます。ある意味究極の進化を描いているという意味で究極SFと言ってもいいのですが、クラークの三大法則のようにテクノロジーが魔法のように描かれている為にファンタジーのようにも読むことが出来ます。

上記の映画やSFドラマにも度々取り上げられクリエイターたちにうまく映像化されている為、難解な空飛ぶ円盤やアセンションのイメージも容易に脳内ビジュアル化が可能です。SFを読む時この作業が出来ないとかなり苦痛になりますので大変重要な点です。この点でこの作品を布教用に使える一冊として取り上げました。

 

他にも巨匠が書いたジュブナイル的な作品などもあるのですがそれは省きました。僕の未読のSF作品でいいものがあるかもしれません。

SF愛好家の視点に布教用、というサブカテゴリーが出来る事を願って。

 

 

読んでくれてありがとう。

僕はこう思う。

Taiyo Haze

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