久々にSFについて。今読むべきだと思ったSF小説があったからだ。

『都市と星』 アーサー・C・クラーク

僕の言う事を信じて、とりあえずこの本を買って読んでもらえばもう何も語ることはないのだけれど少し語ろうと思う。

なぜこの本を今読むべきかというと文明の分岐点がひと昔より前より見え易くなってきているのでは? と思ったからだ。今年のトレンドはメタバースだ。全然知能ではない高性能検索装置をAIと呼ぶくらい薄っぺらい言葉だけのこのトレンドがいつまで続くかいささか疑問ではあるが、この技術の先に文明の分岐がある。文明というか人類の分岐である。とは言っても10年、20年先、という話ではないけれど。

遠い未来(数十億年先)銀河帝国を築き栄華を誇った人類が異星人に敗北し帝国は崩壊した。地球上に残った唯一の都市ダイアスパーからこのお話は始まる。いきなり宇宙情緒溢れる設定だが、さらにダイアスパーというのは僕たちが知っている東京のような都市ではない。人々の過去、記憶、人格は全てデータ化されセントラルコンピューターに管理されている。そして人々はセントラルコンピュータから生まれる。つまりセントラルコンピュータからランダム(数万年に一度)で適当な人データが選ばれダウンロードして人間を成すのである。生まれた時から大人の姿(ジェンダーレス)で生まれ、寿命はおよそ1000年あり、時期になったら自分からセントラルコンピュータへ戻っていく。生老病死の苦しみから解放された世界である。

都市と星はこのような超未来の世界観が描かれている。1955年の作品である。トランジスタの発見が1948と言われているから世の中はまだまだ真空管が全盛の時代。ましてコンピュータなんてものは存在していなかった。当時この事を理解出来た人がどれくらいいたのかわからないけれど、クラークの想像力には驚嘆するばかりである。しかしSF好きでなくともメタバースが話題となっている今では少しイメージしやすいのではないか。

さて、ダイアスパーには一つだけ秘密がある。秘密というかダイアスパーに生きる人々がそう言う生き物である、という表現の方が正しい。都市の外には砂漠以外なく、過去の記憶から宇宙にも寂寞としたものしか存在しないので外の世界に出る、なんて事は意味のない事、未知のものは恐怖するものであるとプログラムされている。つまり外の世界、未知は存在しないものとされている。しかし、主人公アルヴィンは未知のものを求めるイレギュラーとして生まれる。そしてアルヴィンは古の輸送機関を見つけ、存在しないはずのリスという都市を見つけます。

リスという都市はダイアスパーと違って僕たちの文明と近い人間が生活している。生老病死が存在し、普通に食事をする。子供が生まれ老人となりやがて死ぬ。寿命はせいぜい数百年。高度な文明はあるが滅多に機械は使わず動物と生活している。数十億年の進化の中で野生動物は生態系の長である人間に一切害を加えなくなったという設定も興味深く面白い。唯一、彼らは普段はテレパシーを使って会話している点が僕たちには理解が及ばないところだろうか。思考や感覚を共有することができる。

ダイアスパーは理知的な世界の進化の行き着く場所、リスは感覚や感性の進化が行き着く未来の世界である。今の世界で言えばメタバースやAIによって利益を最大化し環境と人間を最適化しようとしている人たちと、自然のままに感性や愛を環境に適応させ進化させていった人たちである。言わば強化人間とニュータイプの文明である。

今の僕たちの感覚では後者の方が圧倒的に弱いように感じる。しかし小説ではどちらの帝国築きやがて銀河の果てで敗北し地球に撤退を余儀なくされている。人類の文明は二つの考え方によって進化の袂を分けることになったが結局最後は同じところに辿り着いた、と言うことだ。

これは実に真実味を帯びていて示唆的だ。SFの醍醐味というようなダイナミックな考え方だと思う。

もしかしたらこれから僕たちは自分たちの考えにあった思考の中だけで生きるようになり、対立し合う、意を異にする人間とは袂を分けて生きるようになるかもしれない。SNSやWEBが発展し僕たちの考え方、感性はデジタルデータのように極端になった。そして今までの世界のように嫌が応にも嫌な人と関わり合わないと生きていけない世界ではなくなった。愛や共感で人生を満たしたいと考える人、自己の利益と達成感をゲームのように楽しむ人生を送りたいと考える人。それぞれがそれぞれに幸せになればいい、それが現代人の考え方ではないだろうか?

どちらが悪いものでもない。どちらの道へ行こうとも進化の道の終着点で僕たちは出会うだろう。

そんな未来へ想いを馳せれば多少袂を別つ寂しさを慰める事ができるのではなかろうか。

そんな思索の旅のお供にオススメのSFを紹介しました。

 

読んでくれてありがとう。

僕はこう思う。

Taiyo Haze

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