さて、サブウーファーの話です。前も一度記事にしましたが、ブログを書き始めた頃だったので無駄な部分も多く、悪文だったりするので少し要領よく書き改めたいと思います。

ライブの時にサブウーファーを意識しているプレイヤーはあまりいないのではないでしょうか? レコーディングではあまり関係ありませんがサブウーファーはライブでは音を支配していると言っても過言ではありません。サブウーファーは主にベース、ドラム、音色によってはギター、シンセも関係してきます。多くのプレイヤーはもちろん出音は気にしていて、慣れた人ならば中音(ステージ内のモニタリング)や低音感も気にしています。しかし、結局のところプロ、アマ問わず普段リハスタで作り上げたバンドのバランスはサブウーファーによって大きく変化、最悪失われてしまっています。これはプレイヤー側でどうしようもない場合もあるけれど、サブウーファーの仕組みを知っていれば避けられる事もあります。

サブウーファーってどんなスピーカー?

サブウーファーとは100hz以下の超低域のみの再生に特化したスピーカーの事です。音楽向けというよりは映画館やホームシアターの5.1ch用のオーディオシステムの一つというのが一般的な認識ではないでしょうか? この×.1.1がサブウーファーの事ですね。よく家電のホームシアターの視聴コーナーでやっぱ違うなぁ、音がいいなぁって素人に言わせる要因の50%くらいがこのサブウーファーの低音です。普段体感しない音の震え、リスナーはこれを感じ取っていつもと違う、いい音と感じる、というパターンです。

映画でのサブウーファーと演出

余談ですが、実のところ映画でサブウーファーを使用しているシーンはそんなに多くはありません。アクションシーンや爆発シーン、激しい音楽がガンガンなっているシーンでは使われていますが、何が何でもサブウーファーがいつも鳴っているわけではありません。

海外映画の素材をもらってProToolsに貼り付けてみると、静かなシーンだと1ロール(だいたい15分くらいのまとまりの事)まるまるサブウーファーのチャンネルのWAVEデータが棒(無音)なんて事もあります。そもそも、セリフのデータはほぼ5.0chで送られてきて、吹き替えのセリフデータも5.0chで納品する事が殆どです。

映画館に行くとセリフの低音が効いてていい、と思うかもしれません。それは作り手が意図的にセリフにEQをかけて作っている(悪者とかにたまにやります)か、だいたいは音量を大きくした際に自然と出て来る低音です。テレビやホームシアターのシステムの低音は後付けEQして膨らませているように思います。普通に喋っているシーンではほとんどサブウーファーに引っかかる事はありません。

映画ではサブウーファーは観客にここ一番の見せ場、迫力、メリハリを感じさせたいところで使うのです。それ以外では極力避けようとします。なぜなら、演出の面から言うとずっとサブウーファーがなりっぱなしだと音で盛り上げるべきところで盛り上がり切らない、という演出的な理由が一つ。そして、エンジニアの目線で言うと、馬鹿でかい低音はセリフなど聞かせるべき音の邪魔になりやすい(マスキング)うえ、100hzくらいの低音をSpl85db付近の爆音でずっと聞いていると結構体に応えます。

昔映画のダビングの前、毎朝映画用スピーカーの調整(ドルビー用)をしていました。その時先輩にサブウーファーは脳みそ揺れるから調整の時も長時間連続で聞くなと教えられました。確かに気持ちいいものではなかったです。ダビングの時も音楽のサブウーファーチャンネルの音量だけクリップゲインで下げたりすることはしょっちゅうです。映画予告だと85Leqという制限にも引っかかるので前半の音楽のサブウーファー抑えめで行こうとか判断します。子供向け映画を作る時は音効さんも手加減してくれます。小さい子供は大人より重低音の影響受けやすいですから。もし、ライブハウスに行ってずっと膝に振動を感じていたらサブウーファーが効きすぎだと判断してかまいません。

音楽シーンでのサブウーファー

映画の話になってしまいましたが音楽でも原理は同じです。しかし、音楽(PA)ではサブウーファーは違った使われ方をしています。

音楽のミキサーは基本一度決めた位置からフェーダーを動かしません。微調整はしていますが、あとはプレイヤー任せです。MAミキサーのように20dbくらいの振れ幅で頻繁にグリグリフェーダーをひねって(動かして)演出するなんてことはほぼありません。演出するのはあくまで演者でそれを忠実に拾うのが仕事だからです。逆に言えばこのレベルでうまく表現して、っていうスタイルです。たしかに例えば玉置浩二みたいな囁きをアフレコミキサーみたいレベルあげて拾ったらアーティストに怒られそうです。演者とエンジニアのパワーバランスが圧倒的に音楽の方が大きい。文化の違いですね。だからしょぼい音出したらそのまま尊重されます。

とは言え、ライブにおいては弊害も生まれます。

その事を知る前にライブ時、PAのサブウーファーから音が出るまでの流れを大雑把におさらいしてみましょう。

 

1、演奏をマイクで拾う。キーボードなどはライン、ダイレクトボックスの音をもらい、すべての音をPAのミキサーに集める。

2、ミキサーからチャンネルディバイダーへ送る。(パッシブで直接アンプでパラる機種もあるが普通はチャンデバを使う)

3、チャンネルディバイダーでどの周波数からクロスオーバーしてHiMidSW3way)のスピーカーに送るか決める。(クロスオーバーを細かく設定できない機種あり)

4、チャンネルディバイダーから各パワー・アンプへ送ってスピーカーから音が出る。

 

細かいエフェクターとかは飛ばしているけど、だいたいはこんな感じです。

だからミキサーがフェーダー(もしくはEQ)、チャンデバへの送り具合を操作しない限りミキサーからはチャンネルディバインダーへは常に一定の低音が送られています。

つまり、プレイヤーが何もしなければオープニングのこけおどしの大迫力の重低音サウンドの設定のままバラードのAメロなんかも馬鹿でかい低音が出続けてしまいます(流石にそこまで極端だとミキサーが下げてくれると思いますけどね)。

これの何が一番問題かというと、映画の演出のところでも触れましたが超低音によるマスキング効果です。マスキング効果とは大きな低い周波数の音が隣り合う高い周波数の音を聞こえにくく、聞こえなくする効果の事です。

例えば100hzの隣、200hzくらいになると男性のバリトンの低音域にさしかかってきます。100hzに爆音の低音が鳴っていると200hzくらいの音域はかき消されていきます。僕は最近のライブハウスの音響のボーカルは中低域が聞こえずらいと感じています。サビなどの高音を張り上げるところでは抜けて来るのですが、Aメロなどの引いたところは抜けてこないどころか、ラウドなバンドの場合下手したら全く聞こえない事がよくあります。ギターもローポジションのバッキングが聞こえないなんて事も多々あります。こういうことが多いライブハウスはバンド内であそこは音が悪い、という評価になってしまいます。僕的には音が悪いというよりバランスが悪いという方が的確とは思いますが、結果は同じことです。

歌物で歌が聞こえない、ボーカルの魅力が伝わらないというのは異常事態なのです。だからこうした環境と今もっとも相性がいいボーカルは口先から頭に抜ける歌い方、声を潰してミャーミャー高音を出すタイプ、元々1kくらいにピークがあるアニメアイドルみたいな声です。ギターなら地を這うような低音弦のリフより、高音弦の10fくらいでチャカチャカ弾くタイプのプレイです。そう考えれば流行りの音楽をやってる人は今の時代に適応した人たちなのだなぁ、と感じます。もし、カレンカーペンターやキャロルキング、ジェームステイラーなどのような自然な歌唱法の人が現代にデビューしたらあの魅力は世に出なかったかもしれない。

バンド内での対策

それでは我々はどうすればいいのか?

一番はPAミキサーがサブウーファーへの送りを意識して出音調整するのが一番だし筋だと思います。しかし、多くても月に一回くらいしかプレイしないライブハウス、多くは一見さんのライブで自分たちのセットリストを事前に送って曲の構成を覚えてもらい、その上ここは低音を少なく、ここは多くなんてリクエストを覚えてもらうなんて現実的ではありません。サブウーファーのセッティング(クロスオーバーの値、各アンプのボリューム)はライブハウスの音だと思っているはずですし、PAシステムの中でサブウーファーは高価なのでぜひ使いたい気持ちもわかります。もし大事なライブでどうしても、というなら事前にミキサーにセットリストとゲーマンくらい包んで送っておきましょう、それくらいの価値はあるかもしれ。おっと。

やはり一番手っ取り早く、自分たちの能力の進化にも繋がるのが自分たちの音(周波数)をコントロールする事です。

例えばギタリストなら昔から手元のボリュームやボリュームペダルを使って自分でダイナミックスレンジを調整してきました。それをより低音にセンシティブになり、ライブでサブウーファーを通したらどれくらい低音が出るか想定して練習する事です。低音が回る、という言葉を聞いた事があると思いますが、とにかく低域は悪魔の笑顔です。低音は体感的ですので皆欲しがります。しかし、先ほど話したマスキング効果はステージ内のモニター環境もすこぶる悪くします。また、低周波は位相の問題も発生しやすく、特に狭い会場ではカオスを引き起こす原因になります。ベースがLine6/Helix使うなら後ろのでかいアンペグ意味ないじゃんとか、密かに思ってます。別にそんないい音してるわけじゃ、、Oops。自己満足の為にバンドのモニターを殺すのはどうか、とも思います。

サブウーファーを演出する

だから、まずライブの演出的としてどこで一番低音を出すべきか考えましょう。そして、そこに向けて低音を引き算してください。特にこの作業はバンドならベースが担当するといいと思います。

例えばAメロなどの引くパート、歌を聞かせるパートは100hzより下は要らないかもしれない。ドラムのバスドラの音量をコントロールするのは難しいと思うのでサブウーファーに引っかかる帯域はバスドラに任せる事にします。超低域で音程や音質の違いを出すのは困難なので、バスドラの音だろうがベースだろうがライブの聴感では変わりありません。ベースの音質の美しさは100hzより上にあるアタック音にあります。

そして、何より大事なのがバンドの場合バスドラとベースをしっかり合わせる事です。サブウーファー以前の時代のバンドでも重要な事でしたが、現代のライブシーンにおいてはより重要です。さっき話したように超低域ではドラムとベースの音質に違いがありません。つまりバスドラとベースがずれれば二回バスドラを叩いたのと同じになります。ヘヴィメタルのようにツインペダルの連打の楽曲で2つがずれると目も当てられない低周波数の飽和を見る事になります。実際よく知るヘヴィメタルバンドのライブに行った時、見事にずれててベースが何弾いてるか全くわからなかったので、よく知るそのベーシストに苦言を呈した事もありました。おそらくそれくらい飽和した方が素人はなんかできてる気になって気持ちいいかもしれませんが、少し上にいきたいのなら調和のとれた低音感を体験するべきです。比べものにならないほど気持ちいいはずです。滅多に得られませんがw 理想はバスドラのアタック音とベースのアタック音がシンクロする事です。

他のパートもサブウーファーに引っかかる音が出てきます。その場合更なる整理が必要です。つまり周波数に応じたパートわけ、アレンジもきっちりやりましょうって事です。

このやり方ではベースの人はこれまで以上にバンド内で重要なポジションを担当する事になります。昔は地味な職人というイメージでしたが、これからは積極的に周波数のコンダクター(指揮)の役割を果たして欲しいです。

これが天使のような悪魔の笑顔を持つサブウーファーとうまく付き合うコツです。

長くなったのでここまで。

 

読んでくれてありがとう。

僕はこう思う。

Taiyo Haze

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