年末のテレビを見ているとやたらめったら名曲登場してお茶の間を賑やかしていました。シリコンバレー時代(ドットコムバブル以降のビックテックの時代)になって天才がインフレを起こし、最近では世界が物価もインフレがちになっています。

日本ではテレビ全盛期からアーティストがインフレを起こしました。当時中学生や高校生だった僕でもさすがにジャーニーズをアーティスト、と呼ぶのはどうかと思いました。素晴らしいエンターテイナーだとは思いますがやっぱりふさわしい、正しい呼び名を使わないとやがて文化を破壊します。僕は忍者タートルズは大好きですが、ハットリくんより忍者感はないですし、少し侍と混同しているところもありますし中国の気功みたいなものが混じってたりします。それが面白いしキャラやストーリーの面白さは最高なのですが、あれが忍者や侍だと思われると全く違うものになってしまいます。

そして時代は進み天才アーティストが織りなす名曲がインフレを起こしています。ヒットチャートに乗った曲はもうだいたい名曲として紹介されていますw

まぁ、天才と言われて嬉しくない人はいないし、名曲と言われて悪い気のする作曲家はいません。悪い事、ネガティヴな事いう人やだぁ〜、って言う気持ちもわかります。そして音楽を売る側からもこれ以上ないお手軽で効果的な宣伝文句だし皆ウィンウィンでいいじゃん。解決〜。はい今日の話はこれまで、チャンチャン♫

というわけにはいきません。

おそらく世の中の99%以上の純然たるリスナーで楽しく聴ければいい人にはこれ以上何も求めません。本当になんでもいいから楽しく聞くのが正義です。しかし、残り1%の本物のアーティストになりたい人、いいミュージシャンになりたい人にはそれではいけません。ただ売れたいクリエイターにもどうでもいい事かもしれません。やはり名曲とヒット曲の間には決定的な違いがあります。そのヒントが僕が思うに共感覚だと思うのです。

音と共感覚

共感覚とはある1つの刺激を知覚すると他の知覚も同時に知覚する事です。まどろっこしくてダメですねw

音で説明します。例えばピアノドの音を鳴らしたとします。するとドの音は人の耳に入り鼓膜を振動音させ聴覚神経が刺激され、結果としてドの音が認識(知覚)されます。これが普通の聴覚の経路です。ここで共感覚を持つ人だとどうなるかというと、ドの音が聴覚神経に触れた時に同時に例えば視神経であるはずの赤、という感覚も同時に知覚してしまうのです。ドレミを弾くと、

ド赤、レ黄、ミ黒、、、というように脳が感じているという事です。

もちろんこれは聴覚、視覚だけの領域でなくすべての感覚の領域で起こります。この共感覚を持っていた事で有名なアーティストが初期Pink Floydのカリスマ、シドバレットです。当時サイケやアバンギャルドの象徴のような存在だった人ですが、音程を認識すると他の感覚を強く認識していたようです。まさに脳内がサイケデリックになっていたという事です。しかも、やばいお薬も全盛期でしたので脳内はひっちゃかめっちゃかだったのではないでしょうか。その影響もあってかノイローゼになってPink Floydを脱退してしまいます。そりゃ現代のサイケと言ってる人に何か嘘臭さを感じてしまうわけですw 本当に脳内サイケだったら音楽どころではなくなってしまいます。

しかしこの共感覚、普通の人でも持っているのではないか、と思います。医学的な現象としてという意味では正しくないと思います。鈴の音がシャンシャンと鳴り響けばクリスマスや冬を感じますし、ラテンの楽器の音を聞けば夏を感じます。これが一般の人にとっての共感覚と言えるのではないかと思います。昔は意識した事がありませんでしたがこの感覚も人によって強弱はあるようです。

この感覚は初対面にあった人に 『この人はやばそうだ、、』『この感覚、何て言うの、、カミーユ、、』 みたいな感性、勘と呼ばれる領域とも似ているのではないでしょうか。シドバレットのように単体の刺激が他の刺激を強く刺激してしまうと神経が疲れてしまいますが、ある程度共感、共鳴というのがないと生きていけないのが人間という生き物です。

感覚の深度

話が長ったらしくなってきたのでサクっと結論を言って終わりたいと思いますが、この共感覚を深い領域まで刺激する曲が名曲だと思うのです。深い領域まで、と言ったのは人間には粗雑、大雑把な感覚からより繊細な感覚までが存在するからです。粗雑な領域というのは思い出、記憶という領域です。例えば青春時代、彼女と一緒に聞いた、と言う思い出やぶん殴られた時に雑踏でかかっていたというものです。ある曲を聞くとそれを思い出す、という曲は誰にでもあるのではないでしょうか? ある曲を聴いて思い出す記憶というのは甘酸っぱいものであることが多いです。

青春の曲というのはだいたい同じ世代の人の間では共感できることが多くのですが、世代が変わると全く通じない事があります。それは他の世代と思い出を共感できないから、というのが容易に想像が尽きます。この領域は網目が大きいので大体の人には溢れ落ちてしまいます。青春ぽい元気な楽曲はだいたいどの世代にも思い出の曲はありますが世代を越えた名曲にはなりにくいです。なんか昔流行ったね、と言われるヒット曲に多いです。音やアレンジ、旋律の共感覚というより、状況と人を結びつかせる音楽という感じでしょうか。このあたりが名曲とヒット曲の分水嶺になりそうです。

もう少し繊細な領域というのがラブバラードや怒り、悲しみのような強い感情の楽曲です。哀愁のある旋律と歌詞が自身の恋愛経験と結びついたり、激しいシャウトが自身の怒りを代弁してくれたり、繊細な震える声が哀し気に聞こえて心を打つ、といった楽曲です。これは大体の人が経験している事ですので共感を生みやすく、世代を越えたファンが付きやすくただのヒット曲を越えて深い感動と人生を彩る貴重な音楽となります。この辺からはメロディ、アレンジ、サウンドの印象、歌唱法などより高度な音楽的スキルが必要になってきます。とは言え誰もが持ってる感情領域という事もあり、定番のお決まり、というフレーズやアレンジが存在する領域でもあります。

さらに感覚を少し掘り進めると季節や街の匂い、時代の匂いという多くの人が共有しているものを表現しているタイプの楽曲です。先程の鈴の音の例のようにクリスマスや季節を音やアレンジで感じるものです。例としては山下達郎の「クリスマスイブ」などは分かりやすいのではないでしょうか? 春、夏、秋、冬という感覚は普遍ですので共感する人は多くここに共鳴できる楽曲は長く愛される名曲になりやすいです。しかし、寒い地方の人はUKやアイルランドの楽曲を好み、暑い地方の人は南部のロックやレゲエなど暑い地方の楽曲を好む傾向にあります。また季節感だけでなく、ニューヨークや渋谷、パリ、というような街の匂いを感じさせるような楽曲もあります。しかし、それもその街の好き嫌いがあるので名曲として残り事は多いようですが、まだ好き嫌いが別れます。また時代の匂いがする楽曲があります。昭和や60’s、70’S、80’sと言った具合にです。これもまたその時代に興味がないとピンときませんので好き嫌いの領域にあります。

そして同じようなところに人間、人生の機微を表現した楽曲があります。その人の人生が楽曲から滲み出るような曲です。人間中心の感覚ですので特に歌から感じられる事が多いのでシンガーソングライター系の人の曲が多いです。先日紹介したJoni Michellなどは典型でしょう。Bluesやフォークのような人間味を追求して行き着くのがこの領域の共感ではないかと思います。この領域の名曲は音楽のスキルで歌ったり演奏するとなぜか一気に陳腐化し、ただの下世話な楽曲に成り下がる不思議な領域でもあります。

そこから少し深い領域に普遍的な情緒と共鳴する楽曲があります。楽しい感じや不思議な感じ、物悲しい、高揚感などどの世代の誰が聴いてもなんとなくそのフィーリングが伝わる楽曲です。Jazzのスタンダードなどがいい例ではないでしょうか。Jazzなんて聞かない、という人も元曲がJazzのスタンダードである事も多いので何度も耳にしていると思います。Fly me to the moonを聴けば何か夜空を見上げているような気分になります。クラシックなども威風堂々など聴けばだれでも威風堂々した気分になります。この辺になると昔の楽曲が多くなってきます。やはり時の摩耗に負けずに残っている曲は名曲が多いのは必然です。

僕が知覚できる一番深い領域に魂より深いところが共感しているとしか思えないような超自然的な楽音です。それは時を越え、文化を越えます。この領域は録音がある程度成熟した1960年以降のアーティストが有利です。この領域の感覚を理解しない人が演奏するとここまで辿りつかない事が多いからです。モーツアルトやバッハの生演奏が残っていればどれだけのものだったか聴いてみたい気がします。これはビートルズが一番分かりやすいでしょう。Let it Beなどの楽曲は英語を理解しない日本人の心にも深く響きますし世界中で楽曲を共感し愛されています。音楽の力を信じさせてくれる名曲がこの領域にたくさんあります。

そして深い領域にある楽曲は上の領域の感覚にも共感することができます。例えば高校時代彼女と別れ話をした後の喫茶店でかかっていたLet it Be は失恋と、人生の哀愁とロンドンの匂いがするような気がして人生と世界の深みを知るようになった楽曲である、というような場合です。こういう曲は様々な次元で価値のある楽曲になります。

 

また話が長くなりました。もし、楽曲を作ったり演奏する時、聴き手のどこの領域に共感するのか、という感覚があると何かヒントになるかもしれません。

まぁ、僕の戯言です。信じるか信じないかはあなた次第。

 

 

読んでくれてありがとう。

僕はこう思う。

Taiyo Haze

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