少し音の根源的な話もしておきましょう。色んな専門書の最初の10〜20ページくらいに書いてある事を要約してみます。

1-1 音速や耳の構造

音速が340mくらいとか、耳の鼓膜、つち、きぬた、あぶみ骨の構造みたいな話はググればすぐ出てくるのでそれを参考にしてみてください。そんな難しい話ではないですし、知らなくてもそんなに困る事はないです。もしかしたら学校で習った事がうる覚えでも残っているかもしれません。それで十分です。以上。

1-2 純音と複合音と倍音

1-2.a 純音と複合音

だいたい色んな音響の専門書で音速の次に書かれているのが純音(サイン波とか)というやつです。純音は音を構成する最小単位と説明されています。また周期と関連して純音は三角関数で表せてsinθは云々、という話がだいたい書いてあります。

音響エンジニアの現場では1kの信号音やピンクノイズ(これらは純音)をDAWやミキサーから出して音響機器のチェックする事は度々あります。しかし、sinθが云々の数式が音響制作現場や音楽制作の最中に必要になる事はまずありません。そこはスルーしても大丈夫です。

しかし、純音が重なって周期的複合音になっているというイメージは大事です。周期的複合音という名前は難解ですが、普段聴いている音は色んな周波数の音が混ざって構成されている、と言えば当たり前の事で理解する事は容易いと思います。便宜的な言葉なので言葉よりイメージを掴めたらそれでOKです。

1-2.b 倍音とピッチ感 

また、周期的複合音の中に含まれている「倍音」の話になると少し音楽的でエンジニアリングにも関係してきます。特にシンセで音を作ったり、モデリングの正体を知る時、さらには柔らかい音、硬い音のような音の印象を操作するには基本になる概念です。オルガンのハーモニックバーをいじる人は直感的に知っている話かもしれません。少しさらっておきましょう。

人が音程(ピッチ)を感じるにはまず音の中に特定の周波数が強くなければいけません。例えば440hzにピークがある音ならばA(ラ)と感じます。この一番強い周波数を基本音と呼びます。また、基本音にはその整数倍(2倍、3倍・・1/2,1/3等)の周波数にもピークがあるという特性があります。これがいわゆる倍音です。楽器の個別性や心地よさはこの倍音のバランスの按配に左右されます。

シンセで音を作るときも倍音を作りますし、実際純音を組み合わせてピアノっぽい音を作ったりしてみると如何に自然が奇跡的な さじ加減をしているのか感嘆します。また、コンピュータでこのような美しいカオスを作ることが如何に困難かも学べます。

しかし、逆に言えばこの支配的な周波数のピークがなければ音に音程感を感じません。ドラムやパーカッションなど音程がない楽器がこの代表です。またノイズと呼ばれるものにも支配的な周波数がありません。その為ノイズとパーカッション楽器は似ていると言えます。ピンクフロイドの「Money」のイントロなどはその好例でしょう。現在のエレクトロサウンドのシーンではノイズでリズムを表現するのは常套手法になっています。

下記に僕がサンプリングした音源のスペクトル解析(周波数解析)を載せておきます。ピアノとスネアはソフトウェア音源です。図1−1のピアノの例が一番典型的だと思います。参考にしてみてください。また、スペクトル解析はフリーソフトのAudacityで行なっています。比較的簡単なソフトなので気になる方はご自身でも簡単に解析できます。自分の楽器の特徴を知っているとミックスの時にも役に立ちます。

参考リンク:Audacity

・ピアノ音源のA(ラ)のスペクトル解析

音源

 

図1−1

 

440hzを中心に倍音が高周波に連なっているのがわかる。同時に低音域にピークのない音が入っている。ピッチには必要のない音(ノイズ)だがこれが膨よかさや温かみ、ピアノらしさを感じさせている。

 

・エレキギターA(ラ)のスペクトル解析

音源

 

図1−2

440hzが中心だが、ピアノと違い1/2(220hz)、1/4(110hz)の倍音成分へも広がっている。低音成分強めなのはストラトキャスターで5弦開放を使ったせいかもしれない。エレキギターのストラトキャスターはスプリングが共鳴するので様々な倍音が同居している。

 

・スネアのスペクトル解析

音源

 

図1−3

一部の帯域にピークはあるのでスネアらしい特徴を作っているが支配的なピークがないので音程感はない。200hz、400hzあたりはアタックの音を調整する時によく調整するEQポイント。

 

1-3 音量、dB

そして、ここまで解説すると次にデシベル(dB)の話がきます。音の大きさの単位の事ですね。音圧レベルと呼ばれています。よく聞く言葉ですがその割にここで挫折する人は多いと思います。なぜなら、いきなり対数logの数式がめじろ押しで出てくるからです。

1-3.a なぜdBを使うのか?

音の強さ(大きさ)は音圧の2乗に相当することからlogが登場します。人間の聞き取れる一番小さい音から、一番大きな音までの差が100万倍ある為、表記するには桁数が大きくわかりにくい為このような処理が生み出されました。一番小さい音が0.00002Pa(パスカル)で、人の声が0.02Paほど、静かなところでは0.002Paです。というとゼロの数を間違えそうだし、わかりにくいですよね。人間が感覚的にイメージできる桁数というのはせいぜい3〜5桁らしいです。また2乗して桁数を抑えると、ラウドネスの項目で後述する人間が感じる音量変化に近くなったので使いかってもよかったのです。

1-3.b dBとは%のような比率を表す単位、まず基準値を決める

またdBは、m、g、℃のような絶対的な値を表すのではなく、2つの強さの比率を表す単位です。%みたいな感じです。無理やり%で表す事だって可能です。しかし、上記したようにゼロの数が途方もなく多くなり実用的ではありません。そのくせ下図3-1のように絶対値であるかのように取り扱われることもあります。dBを使うにはまず0dBの基準値を設定しなければいけません

下図3-1はよく見かけるデシベルの倍数とどれくらいの音かを表にしたものです。この表の場合は0dbに0.00002Paを設定してあります。このように0dBの基準表記が曖昧なまま使用されている事がdBを理解を難しくしています。工事現場の騒音表や大声コンテストの音の大きさでdB表示が使われているのをよく見かけますが、基準を誤魔化せばdBはいくらでも操作出来ます。そんな事しないですけどねw

1-3.c よく使われる0dBの意味

ミキサーや音響機器の場合、0dBに0dBuの業界標準の基準値を設定しています(DAWの0dBは音割れしない最大音量という意味)。0dBuは0.775Vの事ですが現場ではほとんど意識しません。かつての僕がそうだったように知らない奴もいるのでは、と思います。現場ではdBu と言わず、単に0デシ(ゼロでし)と言います。そこから-6dBで音量が半分、-10で三分の一という風になります。

この事はミキサーのフェーダーの単位もdBだし重要っちゃ重要です。しかし、使用するに当たってはdBでは音量変化は一定ではなく、急に大きくなったり、小さくなるものである(ミキサーのフェーダーの上の方と下の方では効き方が違う)、という事は知っておくべきです。また、作業中なぜか音が6dB大きくなったら2倍になっているので何かがダブって出ていると探ってみる(10なら3倍、デジタル機器ならきっちり数字で出る。ProTools等のDAW上のトラック送りを間違えるとこのような事が起きやすい)、というコツを覚えていればトラブルシューティングに大いに役立ちます。まぁ、ミキサーが音量を1/2にしようと思ってフェーダーを操作する事はないと思いますがw そこは感覚の世界です。

あと、ミキサーの0dBとDAWの0dBは意味が違うという事も知っておくといいでしょう。ミキサーの0dBは越えてもあまり問題ありませんが、デジタルの0dBを越えるとクリッピングしてきちんとデジタル化されていないというサインです。これは少し注意が必要です。

あとは機器を使って感覚的に対応していても問題はないと思います。DAW上だと0dBを越えれば赤がつくので、なんかヤバイとわかりますし、ヤバイとわかるのにdBの意味を知らなければいけないという事はありません。

 

色々書きましたが、dBは%のような比率を表す単位で、まず、基準値があり、6dBといえばその2倍、20dBで10倍ということです。その基準値を表す単位や基準は省略されて言われることが多い。と覚えておいてください。

非常にややこしいですが習うより慣れろですね。

 

図3−1

デシベル 倍率 大きさ
0dB 1倍 人間の最小聴力限界
6 dB 2倍
10 dB 3倍 小さな吐息
20 dB 10倍 葉の擦れる音
40 dB 100倍 静かなところ
60 dB 1000倍 一般的な会話
80 dB 10,000倍 騒音
100 dB 100,000倍 地下鉄の電車
120 dB 1,000,000倍 飛行機の爆音(最大聴力限界)

 

1-4 ラウドネスと感覚的音量差

さて、最後にラウドネスの話かと思います。

ラウドネスとはざっくりと言えば音の大きさを人間が感じる感覚で補正した値のことです(これだけだとさっぱりですね)。これは正直音楽だけをしていたらほとんど意識する事はないと思います。MAの現場では重要な事なんですが、例えばテレビ放送用などにラウドネスを-24LFKSを狙って音量を調整します。とは言え難解な概念のわりに難しい作業をしているかと言えばそれほどでもなく、最後はNugenやWAVESのプラグインエフェクトで一気にノーマライズしたりするので知識はなくとも流れ作業で出来なくもないです。(プロならちゃんと勉強していると思いますけどねw)。

ラウドネスの概念で重要なのは、音の感じ方が計測できる数値に比べてかなり人間の感性に左右されるという事実です。例えば温度なら室温が4℃から6℃になった時と、28℃から30℃になった場合を比べても変化の感覚はほぼ同じで、同じ2℃の変化なら急に寒く感じたり暑く感じるポイントはありません。しかし、聴覚には敏感なポイントとそうでないポイントが存在するので急に変化すると感じるポイントがあります

同じ音圧なら4KHzあたりの音に最も敏感でそれ以上とそれ以下は鈍くなっていきます。その為、MA作業(特にCMなど短い映像もの)で4Khzあたりの音がうるさい音楽が入っているとあっという間に-24LFKSが埋まってしまい、他の作品に比べ全体的に音が小さくなってしまうという事になります。音楽制作においては音圧を均等にあげると4Khzあたりが目立ってしまいキンキンした耳障りなサウンドになります。主にノーマライズやマキシマイザーを使う時に関係してきそうですが、この原理を知っていれば機材やプラグインエフェクトがポンコツだと罵る前に自分の過ちに気がつきます。知っていて損はないと思います。ラウドネス曲線というグラフがネットにたくさん転がっています。一度見ればそう言うことか、と納得できると思います。

参考リンク:ラウドネス曲線

https://lucentechno.com/column/sound_recorder/1163/

人の感覚的に感じる音量が周波数ごとに違う事はもちろんのこと、実は男女差(女性の方が音を大きく感じやすい)や年齢差(年をとると高音域が聞き取りにくくなります)もあります。音は人の感覚に左右される為、完全な絶対値は存在しないのです

ラウドネスも奥は深いのですが一般的な使用にはこれ以上の知識はあまり必要ないかと思います。

 

だいたいどんな専門書もこのようなことが10〜20ページ使って説明されています。これを抑えるだけでもかなり専門家に近づいたと言えるかもしれません。

本日はここまで。

 

読んでくれてありがとう。

次章へ続く。

Taiyo Haze


デジタル編①  はじめに

デジタル編②  基本事項のおさらい

デジタル編③ アナログとデジタル

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