いつの頃だったか、MAの音声の作り方EQ編を書きました。あれから幾年の月日が経ちましたが久々に続編を書きたいと思います。

今回はコンプについて少しお話ししたいと思います。なぜこれを書こうかと思ったら正月いつも見ているYouTubeにいい例があったからです。初級編のEQについて書いてから一年以上経っているのですが、それ以降動画業界の音声に関する事情はあまり変わっておらず意外なほど進歩してないなぁ、と思いながらこの記事を書いています。一年前に比べてサムネの作り方やカメラの質、動画編集のレベルは上がっているように思いますが音声の作り方に関してはあまり変化はないように思います。十年前と比べると明らかにレベルが低かったり、大きすぎたりする動画は無くなりましたがそれ以降は変化なしです。

これは音声の録音がカメラのようにいいカメラを買う事で劇的にクオリティーが上がったりする事がないからではないかと思います。何も知識のない素人でもしょぼいAndoroid携帯から金に任せてGoProなどの高性能のカメラに買い換えればテレビ放送にも十分に耐えうる画質で撮影することが可能です。しかし、もし何もわからない素人がNeumanの87を買ったとしても十分な効果を感じられるほどの録音をする事は不可能でしょう。マイクの立て方、特性、狙い方、マイクプリの調整、EQ、ゲイン、コンプ等々様々な調整が必要です。YouTuberでそこまで音に対してこだわっている人は少ないと思います。正直携帯のスピーカーから聞くのであれば何でもいいようにすら思います。しかし、FireTVなどでテレビくらいのサイズのモニターで視聴する機会も増えているのではないでしょうか?僕はここ4年くらいFire TVで動画を見るのがほとんどなので結構録音状況が悪いと動画を視聴するのが辛くなってきます。歪んだ音を十分くらい聞いてると結構しんどくなってくるのが人間の本能です。現場で音声を収録している音声さんや手前味噌ですが何とか聴きやすく調整しているMAミキサーのありがたみもわかります。是非ワンランク上の動画を作りたいならMAミキサーやテレビ業界の音声さんの力を借りてみてはいかがでしょうか? ピンマイクの付け方ひとつでもプロの技というものがあるものです。

さて、前置きが長くなりましたがコンプの話です。実際の僕がいつも見ているYouTubeの動画をStudio One(Pro Toolsは起動ディスク分けてるから書きものしながらは開けないのでw)に貼り付けてみました。

やはり予想した通りでした。見てわかるほど音量差(ダイナミクス)が激しいのがわかります。多分カメラについているマイクか、Shureか何かの指向性の広いマイクをひとつ置いて収録していたのではないかと思います。なぜなら、左右で波形がほぼ同じです。ほとんどモノラルのような波形です。実際二人の演者が喋っている動画なのですが別々にマイクをつけている様子もないのでおそらくそのような環境で録音したように思います。余談になりますが、マイク一本でトークを録音する場合一番の難敵は演者の声の大きさの違いです。声の大きな人にかき消されて声の小さな人の声が聞こえづらくなります。もし別々のマイクで録っていたら録音レベルを調整したり、最終的なMAの段階で音量差を減らす事ができ両者の声が聞き取りやすくなります。

この音量差の調整というのがコンプレッサーという機器(プラグイン)の主な役目です。スレッショルド、レシオ、ゲインなど言葉の意味や初歩的な使い方に関してはネットにも情報が溢れていますし、雑誌でも定期的に掲載されているのでそちらを参考にしてみてください。ここでは基礎的なコンプレッサーの説明は省きます。

これは番組冒頭あたりの”いぇーい、今日のトピックはこちら!!” 的なハイテンション、大声での呼び込みから普通のテンションに移る場面をクローズアップしてみました。画像を見てわかる通りおよそ12dBほどの差があります。12dbですので音量差は4倍ほどある事になります。落ち着いたシーンではもっと差がありませいた。これはさすがに大きすぎます。人間聴覚は大きな音の後の小さな音はマスキングされて聞こえにくくなるという特性がありますので普通に喋っているパートの音がとても小さくなって聞こえます。僕も本編はモニターの音声を少し大きくして視聴しましたが、笑い声や声を張るシーンではめちゃくちゃでかくなってしまって聴き心地が良いものではありません。

こういう時こそコンプが本領を発揮します。

コンプの基本は大きな音を圧縮して(小さくする)小さな音を大きくする事によって音量差を少なくする。そして、全体の音量を上げる、という事です。

MAの作業工程ではコンプなどをかけて整音した後ラウドネス調整という過程もありますのでむやみに音を大きくするだけではいけません。音楽の音のように0db付近のパツパツに音を詰め込んだとしても、例えばテレビの-24LFKSに合わせてノーマライズしてしまうと全体的に音量レベルが下がってしまいます。そのような音声は元から音量差が潰されてますので不自然にのっぺりとした音声になってしまいます。

テレビ番組やアニメ等は結構きつめにコンプをかけて音量差を潰している事は多いのですが、YouTube等の動画は手作り感がある音声にした方がいいように思います。YouTubeでテレビのバラエティ番組みたいなガチガチに作られた音声だとリアリティに欠ける気がします。ですから僕のやり方ですがYouTubeやラジオのようなライブ感が売りの音声はあまりコンプを深くかけずにレンジを広めにとってワイルドな音になるように作ります。

それでは今回この動画を例に僕ならどのようにコンプをかけるかを解説していきます。

今回簡単にかけてみたコンプの設定です。演者の会話レベルを-10dbくらいにしようと決めました。普通に話している時が10dbくらいで、そこから前後5dbくらいになるようなイメージです。その為スレッショルドは-10dbに設定しました。そしてこの番組でレベルの大きなところというのはほぼ大笑いしているところで、Studio Oneでは最大+1.7dbになってクリップしていました。ただ笑っているだけで会話に意味はないので今回ピークはがっつりめに叩こうと思ってレシオは4.01くらい。笑っているだけですので音を潰しまくってもわかりませんw。ラウドネスをかける時に無駄な会話で音量レベルを無駄使いしても意味ないですし。 ピークでクリッピングするのが嫌なのでアタックは早め(2.47の数字に特に意味はない。適当に早くしただけ)。そして全体を4db上げています。会話がちょっと大きくなるとスレッショルドを越えてくるのがこの辺の値でした。

そしてかけて書き出してみたのがこれです。

波形が太くなって音量差が少なくなっているのがわかります。狙い通り馬鹿笑いで0dbを叩くのを防ぎ、セリフレベルが-10db近辺になっています。思ったより余裕があったのでコンプのゲインをもう1dbくらい上げてもいいかもしれませんね。テレビやアニメならもう少しレンジを潰すかもしれませんがこれはYouTubeだしこれくらいでラウドネスのノーマライズかけたらちょうどよくなるかと思ってそのままにしておきました。

MAのシーンでのコンプは音楽のシーンとは違って音が太くなる等の音の色付けという要素はほとんどありません。純粋にコンプとしての音量調整機能を重視した使い方です。もちろんハードやプラグインにもかかり方のクセがあるのでミキサーによって使うコンプの種類はそれぞれです。またこれも重要な要素ですが、音声収録の際にも必ずと言っていいほどコンプはかけて録っています。これにより音割れなどを防いだりする効果もあり中々奥深いものです。

あくまで私のやり方ですが簡単にコンプのかけ方を解説させていただきました。少しでも動画製作にお役に立てればと思います。

 

 

読んでくれてありがとう。

僕はこう思う。

Taiyo Haze

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